ガンで死なない早期発見のための五ヵ条
 生涯で誰しも一度は想像する自分の最後の姿の多くは病死です。なかでもガン死が多いと言われています。平成10年版の厚生白書によると、ガンは死因別の第1位で、年間約27万人が亡くなり、全死亡者に占める割合は26%、3.8人に1人です。

早期発見が一番
 平成8年度にガンにかかった人は年間約52万人。高齢化社会を迎え、今後もガンは増え続けると予測されています。多くの研究者により長年にわたって研究が続けられているにもかかわらず、ガンによる死亡者が一向に減らないのはなぜでしょう。寿命の延びと関連したエージング(加齢)も原因の一つですが、やはりガンの病因そのものが十分に解明されていないためです。それではガンで死なないために私たちは今、何をすればよいのでしょうか。
 米国では食品医薬品局がガンにならない食材の研究を進め、いわゆる香味野菜の有効性を報じたりしています。そしてわが国を含む多くの国々でも生活習慣(喫煙、食事、感染、飲酒、環境、運動、休養)そのものの改善が一次予防として推奨されています。つまり生活習慣全般を見直し、日ごろからガンにならないよう心がけることが大切といえます。しかし、”年には勝てぬ”の喩もあり、いくら一次予防に努力しても、加齢にともなう遺伝子ミスでおこるガンを防ぐことはできません。そこで、ガンになっても死なない方法、つまり二次予防が必要となります。
 ガンの二次予防は、検診で早期にガンを発見し、死から免れることを言います。けれども旧態依然としたガン検診では、現在のガン死亡率を下げることはできず、当然ながらガンの予防にはつながりません。こういった従前のガン検診に対する反省から、検診の有益性に関する疑義を生じ、さらにその是非を問う議論が上下されるようになりました。しかし、ガンを真に専門とする医師の中で、ガン検診の有益性に疑問をもつ人はまず一人もいないでしょう。それでは、どのようにすれば今までとは異なるガン検診が行えるのでしょうか。
 ガンのなかでもとくに死亡率の高い肺、胃、大腸、乳房、肝のガンを例にとりますと、いずれのガンも早期に発見し治療さえすれば、完治あるいは完治に近い治癒が望めます。それには家族的要因、生活習慣、ビールス感染や出産の有無等あらかじめガンの素因について医師が把握し、個々に最適な検診の進め方、すなわち開始時期や検診方法(検診間隔、検査方法等)を決めておくことが必要となります。
 例に挙げた5つのガンの患者さんが皆さん早期発見により死を回避したとしたら、単純に計算しても年間で27万人の8割強の人がガンで死なずにすむのです。

ある診察室での会話
医師「最近、体調はどうですか」
患者「快食、快便、快眠でとても良好です」
医師「そうですか。実は先日の検査で大変な病気が見つかりましてね」
患者「いったいどこが悪いのですか。先生の治療で今はとても健康になったと
   思っていたのですが」
医師「今まで治療をうけていただいた高血圧、糖尿病、高脂血症、陳旧性脳梗塞
   などについては、とてもよく薬が効いています。これらの病気に関して問題は
   ありません。ただ先日の胃カメラで早期のガンが見つかりましてね」
患者「今は食欲もあるし、まったく胃の症状はないのですが…。本当に不思議
   ですね…」
医師「ガンで症状が出たら、そのときはすでに手遅れです。
   深くて大きな胃潰瘍でも無症状の場合だってあるんですから」
患者「薬でなんとか治りませんか。このままほうっておいたらどうなりますか」
医師「薬では無理です。ただほうっておいても数年間は症状もなく経過しますが、
   いずれは転移がおこり症状が出てきます。それから治療しても間に合い
   ません」
患者「…………」

 検診で見つかった早期のガンをめぐるやりとりはこういったものです。ガンにかかっても末期状態までほとんどといってよいほど自覚症状はなく、このことが災いして多くの場合、手遅れとなります。自覚症状のない病気を見つけることの難しさを検者も被検者も共に十分理解し、一定間隔で被検者自らが定期的に受検することや検査時に検者はできるだけ多くの臓器を検査することなど、互いに共通の認識を醸成した上で行われる検診こそ、唯一、早期発見の手段となります。

ガン検診の現状
 厚生省は昨年4月、国の補助事業として老人保健法で義務づけてきた従来のガン検診を廃止し、検診方法を自治体が自由に選べるように見直しました。これによって自治体は個々にガン検診のプログラムを作成することが可能となり、地域特性の面で将来に期待がもたれています。いずれは自分にあったガン検診を選択できる時代がくると思われますが、まだまだ先のことでしょう。いずれにしても検診はあくまで個人の判断と責任に基づくものである以上、当面は現在の制度のなかで一人一人が考え選択していくべきです。
 現行のガン検診の方法はさまざまです。検診に携わる人や機器により精度は著しく異なります。費用との関連でやむをえないところもありますが、将来的には統一した検査基準が必要です。ガンを専門とする医師たちは糖尿病があれば膵ガンを、高脂血症があれば大腸ガンや乳ガンをと、一見関連性がないように思われる病気からもガンを疑う習性をもっています。検診において、こういった習性をもつ医師が担う場合とそうでない場合、またコメディカルである技師が担う場合などがあり、当然、検診への取り組み方や考え方が異なり検査精度も違ってきます。これに機器の違いも加わるとますます精度差は大きくなります。胃がん検診を例に取りますと、胃透視で用いるバリウム濃度、X線管球の焦点サイズや撮影装置の違いによる精度差、内視鏡でいえばファイバースコープのガラス線維の本数、電子スコープの画素数の違いによる精度差が、結果として病変の有無につながります。また、ハード面の違いに加えて、被検者の体型や検者・被検者のその日の体調等によっても検査精度は左右されます。一律にガン検診を評価できない理由はこういったところにあります。
 これからガン検診をと思われる方は、検診の意義や内容を十分に理解され、さらに精度や費用と将来的なガン死の危険性を天秤にかけ、自己責任の範囲内で方針をお決めください。仮に検診によって早期のガンがみつかり、一つのガンを克服したとしても、決して気を抜かず、第二、第三のガンの発見に精を出してください。あなたが動脈硬化によって、心臓や脳の病気で死なない限りたくさんのガンを見つける努力を怠らないでください。その努力はあなたに、『あなたの遺伝子が許す限りの長生き』をもたらすでしょう。

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