お腹を切らずに治しましょう
 がんによる死亡率は、1950年(昭和25年)から増加の一途を辿り、2000年(平成12年)までに男性は約3.6倍、女性は約2.4倍に上昇しました。
 しかし高齢者の影響が少ない年齢調整死亡率では、女性が0.9倍と減少、男性も約1.5倍となっています。
 年齢階級別がん死亡率では、男性で70歳、女性で80歳まで横這い、それ以後、がん死が急増し、やはり高齢者が全体を押し上げています。
 一度かかると治らないイメージの強いがんですが、早期発見、早期治療を行えば決して治らない病気ではありません。今回は特に男女ともに罹患率上位を占める、胃や大腸の消化管のがんについてお話ししましょう。

今後も減らない消化管のがん
 年齢調整死亡率でがん死を臓器別にみると、長年、上位を占めてきた消化管のがんは減り、第1位を占めてきた胃がんでは、男性で約0.4倍、女性で約0.3倍と激減しました。代わって増えたのが、肺がん、大腸がん、前立腺がん、乳がん等です。その結果、男性では肺がんが第1位に、次いで胃がん、肝がん、大腸がん、膵がん、前立腺がんの順に、女性では、胃がん、大腸がん、肺がん、乳がん、肝がん、膵がんの順となりました。
 この臓器別順位を罹患率と死亡率の対比でみると、ここ40年間に激減したがんは、1次・2次予防と医術の向上が大きくかかわっています。しかし、かといって、がん、そのものが減ったわけではありません。かつて死亡率の上位を占めた消化管のがんは、今も男女とも罹患率の上位を占め、特に女性では年齢調整死亡率が減少したにもかかわらず依然として死亡率の上位を占めています。
 食生活の欧米化と、食べ物に対する考え方、保存、衛生面の改善が、消化管のがんの発生に歯止めをかけましたが、それ以上に死亡率低下に寄与したのは、国の補助事業として普及したがん検診と、診断や治療における医術の向上です。
 裏を返せば、がん検診が低調になり、医術のかかわりが減れば、消化管のがん死亡率は再び上昇するにことになります。なんといっても治る時期のがんは誰も自覚できないのですから。

がんが発生する原因とは?
 消化管のがんはどうしてできるのでしょう。まず胃がんは、粘膜が傷むと発生しやすくなります。傷めないためにどうすればよいかを知っておくことも必要です。一般的には、一時に大きなダメージを引き起こすものや、軽度でも持続してダメージを与えるものへの注意が必要です。特に慢性刺激は細胞や組織の修復を困難にします。そういった意味で、ヘリコバクター・ピロリ菌などの微生物は慢性刺激の代表格ともいえます。また、食や嗜好における塩、刺激物、化学物質(発色剤、喫煙、アルコール等)なども量が増せば大きな粘膜障害を引き起こしますし、多くを習慣的に摂れば元に戻れない障害を残します。いずれにせよ、どんな刺激に対しても耐え得る粘膜環境がどの程度備わっているのか、また、若いころの粘膜環境を生涯、維持できるかどうかが、発がんに深くかかわっています。口から入るもの、特に食事においては、衛生面や食材に対する配慮が必要になります。
 大腸がんは、家族的なもの、老化など、遺伝子のかかわりが大きく、これら内的要因と、発がんの引き金となる外的要因(発ガン物質微生物など)とが組み合わさって、がんが発生します。その過程には、変性した微生物をはじめ様々な発がん性物質や、各種細胞の分裂・分化のプロセスが複雑に絡んでいます。欧米型の食生活は大腸がんを増やすともいわれ、国別の部位別悪性新生物死亡率では欧米に大腸がんが多く、高脂肪食、高カロリー食が何らかの形で内的、外的要因にかかわっているようです。

定期検査が予防の第一歩
 備えあれば憂いなし、定期検査さえ受けていれば、がん死は避けられます。自覚症状が出てからでは予後の上で危険を伴います。もし、がんと言われても定期検査で見つかるがんなら心配はいりません。60歳を過ぎたら、大腸は年に1回、胃は年に2回、定期的にできるだけ精度の高い検査を受けましょう。
 現代の医術の進歩は目覚ましく、大きさや深さに多少の違いはあっても、定期検査で見つかる早期のがんは、お腹を切らずに治ります。内視鏡で見ながら病巣を切り取る粘膜切除も、今では一般的な治療法です。短期入院、医療費軽減、麻酔や手術の侵襲も限りなく少なく、どれをとってもこれからの時代に即した望ましい治療の方向といえるでしょう。
 平成12年度の人口動態統計によれば、年間死亡者数は約96万人。そのうち、がんで亡くなった方が約29万人、さらにそのなかで消化管のがんで亡くなった方は約8万7000人です。もし、消化管のがん死がなくなれば、なんと9万人近い人が助かる計算です。医療費も大幅に削減され、元気な高齢社会への期待も高まるでしょう。
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